中国の戦略家「孫子」をご存知の方も多いでしょう。
今回は「孫子の兵法」で著されている戦略の極意を著者が解釈した解説本『最高の戦略教科書 孫子』のご紹介です。
2,000年以上も読み継がれている兵法書に詰め込まれた英知を、現代のビジネスに活かすための本書。
手に取ったのは、こんなことを思っていたからです。
「孫子の兵法」について勉強したいなー
でも漢語が並びまくってる本は読みたくないしなー
孫子の兵法について網羅的に触れているわけではないと思うものの、筆者の解釈も織り交ぜて解説されており、重要な要素には触れることができるのではないかと思います。
経営コンサルタント・経営企画、部長職など、会社や事業の戦略や方向性を定める立場にいらっしゃる方は読んでほしいですね。
他にも古典好きや歴史好きの方、更にはキングダムという漫画が好きな方にも読んでほしいです!
キングダムは春秋戦国時代に秦の始皇帝が中国統一をする時代を取り扱っているので時代は異なりますが、戦略の考え方や「将」に求められる要素は共通するものがありますよ。
『最高の戦略教科書 孫子』オススメ読者
- 『孫子の兵法』の入門書を探している方
- 経営コンサルタント・経営企画や部長職の方
- 歴史好き・「キングダム」好きのビジネスパーソン
ここで質問です。
「出世をして年収を上げたい・キャリアアップをしたい!」
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筆者「きつね」と同じく、あなたもそう考えたことはありませんか?
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『最高の戦略教科書 孫子』概要
著者のご紹介と目次を一覧化しました。
どんなことが書いてあるのか概観しましょう。
著者 守屋 淳(モリヤ アツシ)
著者は守屋 淳(モリヤ アツシ) さん。
著者情報
- 守屋淳(モリヤアツシ)
- 作家、中国古典研究家
- 1965年、東京都生まれ
- 早稲田大学第一文学部卒
- 大手書店勤務を経て、現在は中国古典、主に『孫子』『論語』『老子』『荘子』『三国志』などの知恵を現代にどのように活かすかをテーマとした執筆や、企業での研修・講演を行う。
中国古典を現代風に解釈されて執筆・講演されている方です。
お父様の守屋 洋(モリヤ ヒロシ)さんも中国文学者です。
中国古典のサラブレッドですね。
目次・章構成
孫子の兵法を現代風に解釈しなおして解説している本書。
昔ながらの古典的な解釈や歴史的な背景を重視する方には向かないかもしれません。
逆に、20代や30代で「気軽に孫子の兵法を学んでみたい。触れてみたい。」という方にはピッタリな1冊です。
前半は孫子が活躍した時代のこと、兵法を著してどのように活躍をしていたのか(=「孫子とは?」)を知ることができます。
孫子の兵法をついての前提知識を得たうえで、ビジネスパーソンが現代のビジネスシーンで活かす方法を考察しています。
『 最高の戦略教科書 孫子 』目次
- I部 『孫子』はそもそも何を問題とし、何を解決しようとしたのか
- 第1章 百戦百勝は善の善なる者にあらず
- 第2章 敵と味方の比べ方
- 第3章 戦いにおける二つの原則――不敗と短期決戦
- 第4章 兵は詭道なり
- 第5章 情報格差のある状況での戦い方――各個撃破と急所
- 第6章 情報格差が作れないときの戦い方 1主導権と裏の読みあい
- 第7章 情報格差が作れないときの戦い方 2無形と勢い
- 第8章 自国内での戦い方――地形とゲリラ戦
- 第9章 勝は度から導き出される
- 第10章 勝てる組織と将軍の条件
- 第11章 情報を制する者は戦いを制す
- II部 『孫子』の教えをいかに活用するか
- 第12章 そもそも人生やビジネスに、戦いなんて必要ないのではないか
- 第13章 そもそも戦略と戦術とは、どう違うのか
- 第14章 試行錯誤ばかりしていたら心が折れそうなんですけど
- 第15章 ジリ貧状態では、不敗なんて守っていられないのではないか
- 第16章 相手の急所をつけば、すぐに決着などついてしまうのではないか
- 第17章 詭道やだましあいなんて、品性下げそうでいやなんですけど
- 第18章 「各個撃破」なら勝てるのに、なぜ「選択と集中」では失敗するのか
- 第19章 追いつめる以外の「勢い」の出し方はないのか
- 第20章 弱者はどのように振る舞えばよいのか
書籍詳細
前後半に分けて、内容を簡単に要約していきます。
オススメは最初から読むことで、孫子の兵法に関する概要を把握したうえで、応用編としてⅡ部を読むことですが、好きなところから読んでも大丈夫な書き方にはなっていました。
I部 『孫子』はそもそも何を問題とし、何を解決しようとしたのか
まず「孫子とは?」という点を理解することからスタートです。
『孫子』を著したのは、春秋時代末期に活躍した孫武という将軍だと言われています。
戦国時代は生きるか死ぬか、一発勝負の時代。
一方で現代のビジネスは価値観や需要が多様化しており、「トライ&エラー」「PDCA」「アジャイル」という言葉が流行しているように、小さく生み出して失敗からの学びを次に生かすことを是とする時代です。
時代背景が大きく異なることを踏まえつつ、現代に活かせる学びを得ることが重要。
その点で言えば「勝てない戦いはしない」という考えが、孫子の兵法には根底として流れているように感じました。
如何に負けない状況を作り出すか。
第5章において説かれている「先手をとって引きずり回す」「各個撃破の原理」の考え方は現代において、とても有効な戦略だと思います。
過去の日本は高度経済成長期のように、生産すること自体が需要を満たすことに等しかったので、画一的な商品・サービスであろうと作れば売れました。
しかし、価値観と需要が多様化した現代では、企業側もどのような製品を作れば良いか手探り状態なのです。
そんな状況で、競合企業が自社の予想もしない一手を繰り出してきたら、自社の戦略は揺らいでしまうでしょう。
IT企業が銀行業に手を出すような動きがありますが、これも従来の金融機関からすると対応にリソースを割かなければならない状況を作り出しています。
うまく協業している金融機関であれば良いですが、それ以外の金融機関は活路を見出すために、本業にも身が入らないことでしょう。
そうして奔走している間に、決済機能の提供から始まり、預金口座を押さえ、為替や証券などの分野もIT企業が牛耳ってしまう。
このシナリオが現実に起こるであろうことは、想像に難くありません。
IT企業によう金融業界の席巻は、先手を打って敵を翻弄し、戦力が分散した機に各個撃破で着実に領土を広げる戦国時代にも通ずる戦略だと解釈できます。
II部 『孫子』の教えをいかに活用するか
孫子の教えというのは、全体的に抽象度が高く具体的ノウハウは説かれていないようです。
理由は本書の冒頭でも明かされるように、著者と考えらている孫武は、現代の経営コンサルタントのような存在。
具体的なノウハウを本に書ききってしまっては、本業で稼げなくなります。
ですから、我々が直接的に「孫子の兵法」を活かすことはできないのです。
そこで重要になってくるのが「抽象化と応用力」です。
後半のⅡ部では、孫子の教えを抽象的に捉え、現代に応用解釈する流れが記されています。
様々な例が書かれていますが、第十八章で書かれている「キリンとアサヒ」の例はわかりやすくと思います。
アサヒビールがスーパードライを発売して、当時最大63%のシェアを誇っていたキリンに逆転した背景。
「ラガー」という熱処理済みのビールでシェアを取りすぎていたキリンは、生ビールである「スーパードライ」を売り出して人気を得たアサヒに対抗する術がなかったのです。
単純に考えれば「同質化戦略」として、キリンも生ビールを製造すれば良かったはず。
しかし、できなかった。
なぜなら、キリンが生ビールの美味しさを肯定して新商品を出すことは、当時自社の看板商品であった「ラガー」を否定することになるからです。
逆に「苦い・苦くない」「軽い・重い」と様々な嗜好をカバーしようと戦力を分散させてしまい、各個撃破されてシェアを低下させてしまった。
相手の立場も考慮した参入障壁が形成されていたのですね。
他にもベンチャーや中小企業が大手企業を脅かす存在になっている例を、孫子の兵法を元に解釈した章もあります。
『孫子』の入門書に最適
『孫子の兵法』が現代のビジネスシーンにも応用が利く考えであることを理解して、自身のビジネス環境へ応用させる思考を持つことが、本書の一番大きな学びとなるはずです。
現代の「将」である管理職や「戦略家・参謀」である経営コンサルタントの方々は、ぜひともご一読のうえ、自身のビジネスへどのように応用することができるのかを考える機会としください。
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