PM(プロジェクトマネージャー)やPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)が「最近、タスクをバリバリ捌いてるな!」と感じ始めたら、危ない。
PMやPMOがタスクを捌いていく様は一見すると、タスクという敵兵を自ら積極的に担当してバッサバッサと斬り倒していく一騎当千の名武将という印象を持たれることでしょう。
しかし、実態はプロジェクトマネジメントが出来ていないことの裏返しとも言えます。
プロジェクトが炎上する理由自体はスコープが定まっていない場合や、量の観点でも質の観点でもリソースが明らかに足りない場合など色々な可能性が存在します。
大事なことはプロジェクトを炎上させないこと、炎上を未然に防ぐことではあるのですが、プロジェクト炎上の兆しを早期に検知することもまた重要です。
今回の記事では「PMOがタスクを捌き始めたらプロジェクト炎上のサイン」ということを
PM・PMOはプロジェクトマネジメントが責務
PMはプロジェクト全体の進捗管理やリソース管理、およびステークホルダーへの報告や相談などを行う管理者です。
プロジェクトの規模が大きくなるとPMだけでプロジェクト全体を管理することは難しくなるので、プロジェクト管理を補佐する専門チームが組成されることがあります。
それがPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)です。
PMOは、プロジェクト推進に関する行程やタスク管理、各種資料のテンプレート作成や会議体設定や運営など、PMやプロジェクトメンバーが円滑に、かつ品質や納期を担保しながらプロジェクト推進できるように様々な調整や管理を行います。
これが本来の役割です。
その役割の果てには、リスク管理に基づいた適切な対応策(リソース投入や他のタスク・ステークホルダーへの影響確認や調整等)が成されます。
つまり、マネジメントが適正であるなら、事前にリソース不足や作業品質低下等を検知して対応策を講じることが出来るはずです。
責務を果たせていないPMOが生まれる理由
責務を果たせていないPMOが生まれる理由は、大きく2つに分類されます。
マネジメントルール・ツールの整備不足
1点目は、プロジェクトの立ち上げフェーズやコントロール・プロセスの検討時に、マネジメントが機能するようにルールやツールを整備できていなかったことが原因です。
これは組織的にプロジェクトマネジメントに関する経験や感度に不足があるときに発生する問題ですが、経験豊富なPMOを設置することで次第に解消される問題です。
PMOの形骸化
2点目はルールやツールは一定水準の整備が成されているのに、PMOが形骸化してしまい情報の集約が機能しないケースです。
ここは更に2つに細分化できます。
- 1つが単なる書面上の管理に終始しているケース。
- 2つ目が現場との心理的断絶(不信感や敵対心など)による情報の隠蔽(もしくは良い面だけの報告)が起こっているケース。
1点目については、若手コンサルタントが陥りやすいケースです。
WBSや課題管理表等をトラッキングするものの、各タスクの意味合いやプロジェクト全体への影響を考慮する知見や勘所がなく「期限超過しているか」「次週のタスクは何か」と表面的に追っていくことしかできないのです。
次の「情報の隠蔽」については、意識的か無意識的かは別として情報の連携がスムーズに行われない状況です。
PMOはマネジメント側として経営層やマネージャー層との距離が近いと思われがちです。
実際はプロジェクト推進に対してフラットな立場ではあるものの、現場の人間からは自分たちの不手際を上層部に報告する人間たちと思われる可能性もあります。
これは日頃からのコミュニケーションや支援によって信頼を得ていくしかありません。
現場のプロジェクトメンバーがタスクをこなす上で障壁となりそうな課題や調整事をPMOとして組織横断的に解決していく。
この繰り返しが重要です。
もしくはプログラマーやエンジニア等の技術職の方に対しては、その方の技術力やプライドをくすぐるような少しテクニカルな質問をしていくことも有効です。
自分が誇りを持って開発をしていることについて質問をされると嬉しいものです。
結果的に「火消し」としてのPMOが誕生
PMやPMOは、本来的にはプロジェクトマネジメントが責務です。
プロジェクトマネジメントの不全により、PMOが自分たちに割り振られていない実タスク(WBSのワークパッケージ)を(誰かのフォローの形で)推進していることは、何かしら異常が発生していることを意味します。
PMOの成果として理想なのは「問題を未然に防ぐこと」だと、筆者「きつね」は考えています。
「火のない所に煙は立たない」と言いますし「炎上プロジェクト」という言葉が使われ、最後は「火消し」という役割を担う消防士(主にマネージャークラス以上の人材)が現場に投入されることになります。
結果的に消防士はヒーローとして讃えられる・・・。
クライアントから評価されるので、火消しをした人はコンサルタントとしての単価も上がりファーム内の評価も上がります。
しかし、その先に生まれ得るのは「火消しが美味しい」ことに気付いた高級消防士。
消防士が出動することなく、ガス漏れ時点で検知して、引火する前にガス栓修理をすれば良いのです。
PMOは検知器であるべきです。
人月商売であり労働集約ビジネスであるコンサルという職業の性質上、仕方ない部分もあるのは理解しています。
コンサルファームの経営層やシニアなコンサルタント層としては、稼働率上昇や売上増に有効な一手であることに疑いの余地がないことも理解できます。
それでも私は「マッチ一本、火事の元」と言いながら、住宅街を歩き回り平和な日常を見守る役割でありたいと思います。
このブログを読むコンサルタントやプロジェクトマネジメントを担う方にも同じ想いでいてほしいと願います。
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